ある主婦の徒然草

本と映画が好きな主婦の備忘録

古本にまつわる珍ミステリー

 『奇。珍。怪』大歓迎!!

怪書探訪

怪書探訪

 

奇っ怪な物好きなワタクシの奇っ怪読書歴の始まりは、小学校四年生でどハマリしたポーの「黒猫」でした。
確か、子ども向けの全集で読んだはずなのに、名作「モルグ街の殺人」や「アッシャー家の崩壊」「黄金虫」を差し置いて、むしろこれしか記憶に残ってないってくらいリピートして読んでいた。

似たような感覚で惹かれるものでは、主人公がある朝目覚めると虫に変わっているっていう、カフカの「変身」。

こうゆう、一歩間違うと怪書となりうる危うさをはらんだ幻想奇談が大好きなんです。

 

古書蒐集家、古書山たかしさんは趣味の域を超える古書の蒐集をされていて、なおかつ四季報に載るほどの有名上場企業の役員さんだそう。

筋金入りの読書家、書籍愛好家の様で、その文才も素晴らしい!
表現力と語彙が豊かなため、読み始めるとぐいぐい引き込まれましたわ。

以前に書いた、中野京子さんのそれ(言いたいことはたくさんあるけどがんばって濃縮しましたという文章)とは違い書きたいことをこれでもかっとぶち込むスタイル。
それでも自身が相当マニアックな感性の持ち主出あることを十二分に理解しているため、”興味が無ければさっさと読み飛ばしちゃって~”とのたまわれる(笑)

古書の中でも怪書・珍本に対する並々ならぬ愛情を感じずには居られない。

自身の古書蒐集についてのお話から始まり、珍本などの紹介も多く挙げられている。

最初の「トーマスマンの直筆の書」については、その真実への追求の情熱と情報を屈ししての推理展開は、さながらミステリー小説のようだった。
まさに古書のサスペンス!

また、ミステリーといっていいのかわからないもののとにかくストーリー展開のエキセントリックさで忘れてはならないもののなかに、栗田信の「発酵人間」がある。
こちらも一度絶版になり、一部のマニアの間では40万を下らない値がつけられる垂涎ものらしいが、著者はなんと図書館本をコピーし、精巧な”俺だけ 発酵人間”を作っていた!!

発酵人間を読んだことがないが、著者の簡単なあらすじ紹介からして相当”イッチャッテる”代物らしい…。

それをせっせとカラーコピーし、本格的に製本キットまで使ってつくる姿は想像するだに正しく゛ヤバい人゛であり、なんとも微笑ましく思った😆👍👍

翻訳物の珍本も多くあるとのこと。

たとえば、波野次郎(サザエさんのいとこ、ノリスケの兄の名前)著の「怪人ジキル」に至っては、フランスの名作家ピエール・カミのおふざけストーリーを馬鹿まじめにインスパイアされ生み出されたものという。
初っぱなから大量殺人事件→凶悪殺人犯の脳を木に移植→木からタンスを作る(なぜ?)そしてタンスが凶悪殺人を犯す→通天閣から飛び降り自殺(原作ではエッフェル塔)・・・・。

作品を読むまでもなくB級・・否、Z級の臭いがする。

だいたい殺人を犯すのが、なぜ途中からタンスで無ければならないのか?おそらく最後まで解明されないんだろうな。

ある意味、すげぇ。。

ちなみに古書山さんも突っ込んでるけど、「ジキルとハイド」からインスピレーション得てこの題名にしたのかも知れないけど、”ジキル博士”はいい人だからね(笑)


そして、個人的に1番度肝を抜かれたのは、「孤高の人」「八甲田山死の彷徨」「武田信玄」などでおなじみ、数学者で文筆家の藤原正彦氏の父上であられる、新田次郎氏の珍作品、「夜光雲」。
こちら、テーマはUFO。えっ!UFO?
だって、ワタクシあの「剱岳 点の記」でも、「孤高の人」でも、その硬質な雰囲気に、硬派な男気を持つ方とお見受けしましたのに??
しかも、UFOの出現だけならまだしも、主人公の男性が同時進行で5人の女性とチョメチョメな関係になるって・・・。
そのギャップ、決して嫌いではありませんことよ!!(笑)

そのほか、歴史、時代小説で著名な吉川英治氏が、あの有名な”キングコング”に影響されたとしか思えない小説を書いていた、とか女流芥川賞作家の田辺聖子さんがツチノコ探しをテーマにした珍ストーリー「すべってころんで」とか。
氷壁」の井上靖ですら、雪山ものから派生したのか、”雪男”を描いたりしていると・・・。

作家というのは、生産性を求めてはいけないのだね。
彼らの原動力は、あくまで「空想」「直感」「表現の欲求」でできている・・・。
たとえその話がZ級に出来損ないであっても、文字にして著さずにはいられないと。

その他、スターリンにけんかを売ったロシア人作家の話や、おならで大出世を謀る者の話など、とにかくユニークな逸話の宝庫だった。

ただの古書蒐集話ではなく、さまざまな珍エピソードの数々は、本に興味の無い人でも楽しめるはず♪